このページでは、保育業界における業務改善のポイントと実際の業務課題、ITツールの導入によって業務改善できた事例をご紹介しています。
静岡県にある幼保連携型のこども園では、新卒の保育人材の確保に課題を抱えており、園児定員147名に対して職員数が40名ほどという人手不足の状況にありました。
そこで、これを機に職員のニーズに寄り添った働き方改革を実施。働く時間帯を多様化して職員が主体的になれる職場環境をつくり、人材の定着と潜在保育士の活用を目指しました。
新しい人材確保の前に、まずは今いる職員の離職防止に注力することが大切と考え、柔軟なシフト運用のための研究を行いました。また、現在働いていない保育士(潜在保育士)が働きやすいよう、求職者や職員のニーズに寄り添った働き方改革を実施しました。
具体的には、園内研修を見直して体系化する、日々の業務と連動して振り返り書類を活用する方法を見出し、職員の負担を軽減するといった取り組みを行いました。
シフト運用を柔軟化した結果、日々の業務内で休憩を取りやすくなったほか、業務中に子どもたちから離れる時間(ノンコンタクトタイム)が増えて、その時間を他の作業にまわせるようになりました。
有給取得率も向上し、離職者を減らすことにも成功しています。また、職員自らが働き方についての見直しや制度改革に積極的にかかわったことにより、モチベーションやエンゲージメントの向上につなげています。
このように、働く側と運営側が互いに話し合い、支え合う関係を築くことによって働き方改革を成功させました。
東京都板橋区にある保育園の事例です。はじめて第三者評価を受けた際、記録がなかったために、さまざまな取り組みへ評価が上手くされませんでした。
この経験を踏まえ、今後の業務や取り組みをきちんと記録できるよう、ICTの活用を検討。
業務記録や業務の進め方について知識を増やし、マニュアルを作成して標準化しようとしました。また、それに伴い情報共有や業務効率化にも目を向け、ICT業務の標準化を目指しました。
業務標準化の研修会に参加し、約3年をかけて職員と業務の標準化を検討しました。園舎建て替えのタイミングで園内のネットワーク環境を整備し、ICT環境を整備。補助金を活用して業務ソフトを導入しました。使い方が分からない職員へは丁寧なフォローを行い、定着と浸透を図りました。
就業規則を見直すなど、長く働ける職場環境づくりにも着手。若い職員を巻き込んで、得意分野を活かして個々が活躍できるような職場づくりに取り組みました。
共有フォルダを作成・保存して、どの端末からも仕事ができるようになったことで、これからやるべき作業を可視化できるようになったほか、職員同士が業務をシェアしながら同時に進行できるようになりました。
また、チャットツールやWeb会議ツールを導入したことで情報共有がしやすくなり、非常勤職員などへの周知もしやすくなりました。人が集まらなくてもオンラインで会議や研修ができるので、働きやすさにもつながっています。
東京都町田市にある認可保育所では、異業種からきた園長が、これまで保育業界で「当たり前」とされて放置されていた部分を見直して業務改善を図りました。
この保育所は「業務改善や働き方の見直しが必要」とは分かっているけれど、一歩を踏み出せないままでした。しかも、業務負担が大きく、職員の多くが仕事を楽しめていない状況でした。
そこで、業務課題を見つけるために、まずは職員の悲鳴に耳を傾けることからはじめました。
職員1人ひとりの残業申請時間と、実際に残業した時間が合っているか残業時間をチェック。サービス残業や持ち帰り仕事は当たり前で、やる気のある証という風土になっていないかを調査しました。有給休暇の消化率が現場で把握されているか、きちんと消化できているかも細かく調べました。
同時に、業務量と業務時間を軽減するため、ICTやデジタルツールを積極的に導入しようと提案。ICTの必要性を認識してもらい、現状を変えようと訴えて一緒になって取り組みました。
保育計画・記録をPCで作成して保存することで、毎年1から作業していた業務を減らしました。また、保護者への連絡をSNSアプリで配信行いプリント作成の作業を減らしたほか、可視化によって保護者が確認しやすい環境も構築しました。
集金は電子マネーや銀行引き落としなどの自動請求支払いにする、一時保育や体験申込などもホームページから受け付けることによって、事務方の作業も大幅に軽減されました。
これまで、他の業務に割いていた時間を「子どもたちを見る」というコア業務に使えるようになり、子どもの主体性を尊重する保育を実現。職員の離職率低下や産休・育休取得後の復帰率もほぼ100%にまで引き上げることに成功しています。
労働環境の悪さから保育士の離職率は高く、就職者の約1割が離職すると言われています。
保育士は業務量が多い一方で休暇が少なく、有給休暇はあるものの、人材が慢性的に不足していることから取得しづらい状況にあるからです。
業務改善によって保育士の肉体的・精神的な負担を軽減する、休暇を取得しやすい職場環境を実現することが、慢性的な人手不足を解消するのに非常に重要です。
保育施設は、運営側の体制だけで完結される特殊で閉鎖的な環境です。長年同じ体制のまま業務が続けられていると、職員が働きにくいだけでなく、「変えられないのが当たり前」といった風土になり、人員が定着しない、そもそも人員が集まらないといった悪循環を招いてしまいます。便利とは分かっているけれど、「デジタルが苦手」だから取り入れないのではなく、職員と一緒になって意欲的に学びながら改革を進めていくことが大切です。
働き方改革が成功している保育園では、以下のポイントを確実に改善しています。
保育士の多様な働き方を実現するために、適切なシフト管理や柔軟なシフト体系の構築は重要です。
紙やExcelなど従来の方法で勤務管理をしていると、情報共有しにくいほか、修正にも手間がかかります。手作業だとミスが発生する可能性も高いため、勤怠ツールを利用するなど、手間がかからずミスが起きない環境を整えるようにしましょう。
保育施設によっては、いまだに書類を手書きで作成したり保護者への連絡方法はプリントや電話連絡のみだったりと、アナログな方法で行っているところもあります。紙の資料は作成や管理に時間がかかるほか、ミスも生まれやすくなります。
子どもたちにより多くの時間を使えるように、作業は可能な限りデジタル化して、負担を軽減しましょう。
作業をデジタル化すると、フォルダに作業を共有・保存できほか、進捗を可視化できるようになり分担しやすくなります。
チームティーチング体制を導入すれば、負担を分散できますし、急なシフト変更やお休みもフォローしやすくなります。また、ベテラン保育士の知識を共有・保存できるよう、情報共有ツールを使うのもおすすめです。欲しい情報にすぐにたどり着けるので、保育士間のコミュニケーションにおいても効率化を図れます。
保育業務にITを活用すると、「時間をかけるのが当然」と考えていた作業や業務も効率化されるため、職員の業務負担を大幅に軽減できます。「子どもを見る」本来の業務に注力できるようになり、保育の質を高めることにもつながるのです。柔軟なシフト体制と休みを取得しやすい環境を実現できれば、職員の定着率アップも期待できるでしょう。
園だけで業務効率化に取り組むのも良いですが、革新的なアイディアや経営のヒントを得るために、あえて保育の常識を持たない業務改善コンサル会社の指導を受けるのもおすすめです。
本サイトでは、業務改善コンサルティングを行う会社を紹介しています。
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