保育現場では経理や事務作業の煩雑さと人手不足が重なり、本来の「保育」に割く時間が足りなくなっています。IT導入を検討しても、専門人材の不足から何を優先すべきか判断が難しく、効果への不安も大きいものです。業務改善には抵抗を感じる現場もありますが、適切な手法でプロセスを見直せば、負担が軽くなり、保育の質も向上します。
本記事では、具体的な事例を交え、改善の進め方を解説します。
保育業界が直面する課題に対し、コンサルティング会社が支援した業務改善事例を見ていきましょう。
社会福祉法人三祉会は、7つの保育園と2つの訪問看護ステーションを運営しています。しかし、補助金運用の制約から、園長が多数の職員の給与計算を一手に担い、税法改正への対応も行うという業務が、大きな負担となっていました。
JOEは、人事給与業務アウトソーシング(BPO)、年末調整サービス、給与計算システムなどの導入を支援。サービスの活用後は煩雑な計算業務が大幅に削減され、園長は本来の業務に集中できるようになりました。
さらに、Web明細や年末調整の電子化を進めることで、業務効率化と環境負荷軽減を両立しています。
社会福祉法人明星福祉会では、朝夕の登降園時に欠席・遅延連絡の電話が集中し、保育士が対応に追われるうえ手作業での情報共有に漏れや重複が発生していました。
この課題に対し、パソナテックは「保育園LINE出欠管理システム」を開発・提供し、導入を支援しました。システム設計では「誰でも簡単に操作できる点」を重視し、子育て経験のある開発チームが現場のニーズを細かくヒアリング。園のイラストテイストに合わせたカスタマイズも行い、きめ細やかな配慮がなされました。
導入後は、24時間LINEで連絡を受け付け、タブレットやAIスピーカーでリアルタイムに情報共有ができるように。電話対応や手作業の負担を大幅に軽減し、保護者の利便性も向上させています。さらに現場全体の業務への信頼感も大きく高まりました。
B社は事業拡大に伴い、短い月次決算締切が経理スタッフの負担を増大させ、業務品質の維持や標準化が課題でした。経理フローの抜本的な見直しと効率化が急務となっていました。
この課題に対し、CSアカウンティングは経理処理マニュアル作成や経理規定整備支援、月次レビューによる指導・相談など、幅広い支援を提供しました。
会計ソフト設定や根拠資料作成の適正化、不要作業や二重チェックの排除を通じて経理部門をスリム化。集計業務のアウトソーシングとクラウド会計システムの導入により、月次作業を同時並行で進め、月初処理を大幅に効率化しました。
また、会計・税務・保育施設会計に関する相談をワンストップで行うことで、様々な課題を同時に解決し、打ち合わせの手間も削減。システム導入によって、リアルタイムで帳簿確認が可能となり、会計・税務面の課題解決がスムーズに進むようになりました。
慢性的な保育士不足は業務量過多を招いています。保育園では、安全管理や教育、保護者対応、書類作成、行事準備など、多岐にわたる業務を限られた人員で処理しなければなりません。その結果、労働時間の延長や精神的負担が深刻化し、離職率の上昇にも繋がっています。
働き方改革で長時間労働の是正や有給取得促進が求められる中、業務プロセス見直しとIT化による効率化は不可欠です。しかし、多くの園では専門知識やノウハウが不足し、改善に踏み出せないのが現状です。
保育業界で業務改善を実現するためには、多角的な視点からアプローチし、園全体で取り組むことが重要です。
厚生労働省の「保育分野の業務負担軽減・業務の再構築のためのガイドライン」を基に、具体的な方法と手順を見ていきましょう。これから解説する方法は、「煩雑な入力業務」や「IT人材不足」の解決にも繋がるヒントとなるはずです。
ICTの活用は、業務効率化の強力な推進力となります。保育園における日報や連絡帳、園児の出欠管理、保護者への連絡などをデジタル化することで、手書きや電話による手間を大幅に削減。
例えば、園児管理システムや保護者連絡アプリの導入は、情報共有をスムーズにし、業務の効率化に貢献します。
しかし、システムの選定や導入、運用には専門知識が求められるため、外部の業務改善コンサルティング会社やアウトソーシングサービスの活用の検討をおすすめします。
プロの視点から、園の状況に合わせた適切なシステム導入や運用を支援してもらえば、ITに強い人材がいなくてもスムーズなデジタル化が可能です。
保育補助者の活用も有効な手段です。保育士が本来の保育業務に集中できるよう、資格の有無にかかわらず、清掃や準備、見守りなど、保育士のサポート業務を担う補助者を配置する選択肢を検討してみましょう。保育士の負担を軽減し、専門性を活かした業務に専念できる環境が整います。
記録・書類業務の見直しと工夫は、時間短縮に直結します。日誌や連絡帳、指導計画など、多くの書類作成が発生する保育現場では、その作成方法やフォーマットを見直すことで、大幅な時間短縮が期待できます。
定型文の活用や、必要な情報のみを記入する簡素化、そしてICTの活用によるペーパーレス化も有効な手段です。
柔軟な働き方の見直しも重要です。シフト制の効率化や、休憩時間の確保、有給休暇の取得促進など、労働環境を改善することで、保育士の心身の負担を軽減し、定着率の向上につながるでしょう。
業務の棚卸しを行い、効率化できる部分を見つけることで、柔軟な働き方が実現できる可能性もあります。
働く意欲とチーム力の向上は、業務改善の大きな目標です。業務改善は、単なる効率化だけでなく、保育士一人ひとりのモチベーション向上にも繋がります。
業務負担が軽減され、保育に集中できる環境が整えられると、仕事へのやりがいを感じやすくなるでしょう。定期的な意見交換の場を設け、チーム全体で課題解決に主体的に取り組めるようになります。
保育士不足や業務量過多の解決には、ICT導入だけでなく、現状の業務フローを詳細に把握して課題を抽出し、改善策を実行することが不可欠です。業務フローの詳細把握と課題抽出によってブラックボックス化した業務も可視化でき、ツール効果を大きく引き出せます。
さらにプロセス再構築やITツール導入、必要な業務代行など、包括的に対応できる業務改善コンサルティング会社を活用すれば、自園に適切な施策を実施可能です。
その結果、保育士の負担軽減や業務の標準化が進み、より働きやすい環境が整います。業務改善の成果を数値で示し、経営層と共有すれば、経営の安定化と保育の質向上という二つの目標を同時に実現できます。
あわせて、業務改善コンサルティング会社をまとめた紹介ページもご用意しておりますので、ぜひご覧ください。
業務改善を進めるにあたっては、自社の課題や体制に合った支援パートナーの選定が重要です。ここでは、部署別の業務課題に対応し、アウトソーシングも含めた柔軟な支援が可能な業務改善コンサル会社をご紹介します。

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