病院では、診療そのものに加えて、診療報酬請求(レセプト)や未収金管理、届出資料の作成、経理・労務といった膨大な事務作業が日々発生しています。2024年4月からは医師の時間外労働に上限規制が適用され、医師の業務を事務職や看護職へ移すタスクシフトが進む一方で、その受け手となる部門の負担が限界に近づいているケースも少なくありません。人員を増やす余裕がない中で、どこから手をつけるべきか判断が難しいという声も多く聞かれます。
本記事では、具体的な事例を交え、病院における業務改善の進め方を解説します。
病院が直面する課題に対し、コンサルティング会社が支援した業務改善事例を見ていきましょう。
鹿児島市でいまきいれ総合病院(349床)と上町いまきいれ病院(101床)を運営する公益社団法人昭和会では、新型コロナウイルス感染拡大期と新築移転・理事長交代が重なり、補助金を入れても赤字幅を埋められないほど危機的な経営状況に陥っていました。院内にはデータが蓄積されていたものの、活用しきれていない状態が続いていた点も課題でした。
この課題に対し、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)は、外部・内部環境調査に基づく4か年の中期経営計画を策定。その後、理事長をトップに据えた「業務改善プロジェクト」の実施体制を構築し、1年間の実行支援型コンサルティングを行いました。
現場に入ったコンサルタントがまず着目したのは、患者対応が非常に丁寧である一方、算定要件を厳しく考えすぎて診療報酬の算定が消極的になっていた点です。そこで制度の適切な理解を促すとともに、全国1,000病院超の医療ビッグデータに基づくベンチマーク分析の結果を共有し、他院との比較から算定の最適化を進めました。
あわせて業務体制の見直しも進行。たとえば薬剤師2人体制で行っていたがん化学療法の薬剤チェックは、投与量計算機の導入により1人で対応できる形へ変更し、もう1人を別の業務に充てられるようになりました。こうした取り組みが院内各部門に広がり、薬剤課単独で2400万円の改善、法人全体ではわずか1年で約3億円の改善を実現しています。
また、上町いまきいれ病院では、回復期リハビリテーション病棟の入院料を2026年度までに「入院料2」から「入院料1」へ変更する目標を掲げていました。現場ヒアリングからFIM評価が厳しすぎたことが要因と判明し、他院とのデータ比較や退院時FIM評価をリーダークラス2人体制で行う運用に見直したことで、コンサルティング開始から半年で「入院料1」の届出を開始し、目標を前倒しでクリアしました。
ある病院では、長年経理を担当していたベテラン職員が体調を崩し、急に退職することになりました。多少の経験がある別の職員へ引き継ぐ予定でしたが、スムーズに引継ぎができるかという不安を抱えていました。
現状を確認すると、従来の担当者の経験に基づくアナログでの処理が多く、帳簿と会計システムの連動もうまくできていない状態でした。さらに、業務フローがマニュアル化されておらず、経理業務がブラックボックス化していたことも課題でした。
この課題に対し、MARKコンサルタンツは新旧職員の業務引継ぎの場に立ち会い、業務内容を把握。新しい職員が仕事を覚えるのと並行して、数か月をかけて効率化・簡素化を図る進め方を提案しました。あわせて、外注化することでコスト削減につながる業務を整理し、記帳業務などの委託も進めています。
その結果、旧職員の退職までに後任者が業務の全容を把握し、引継ぎを完了。記帳業務の外注化により新担当者の負担も軽減され、経理担当者は他業務との兼務が可能になりました。最終的に経理全般にかかるトータルコストを従来の30%削減することに成功し、担当者不在時に業務が止まってしまうリスクも回避できています。
大阪府にある365床のケアミックス型病院・吹田徳洲会病院の医事課では、経理への報告期日が近づくと、通常業務の後に3~4時間の残業をして書類を完成させていました。21時を越えることも珍しくなく、職員の疲労が課題となっていました。
同院はグループ病院からRPA導入の成果報告を受けて導入を検討しましたが、ロボット開発を外注せず院内職員が担う体制を目指していました。そこで、全国の病院と知見を共有でき、パートナー企業からの開発支援も受けられる「BizRobo!」を採用。医事課でパソコン操作が得意なメンバーを開発担当に選任し、支援を受けながら導入から約1年で25体のロボットを開発しています。
最も効果が大きかったのは「未収金の入金確認ロボット」です。従来は日常業務を終えてから遅くまで残業して入金確認をしていた作業を自動化し、約8時間の業務量を1時間以下に短縮。担当者が定時に帰宅できる体制になりました。
ほかにも「レセプト返戻の報告ロボット」を開発し、返戻データから部門ごとに必要な情報を抽出し、合計金額をExcelにまとめて各担当者へメールで報告するまでの一連の流れを完全に自動化。手入力で起きていたケアレスミスの防止にもつながっています。
2024年4月から、医師の時間外労働に対して原則年960時間の上限規制が適用されました。これに伴い、医療行為の一部を特定看護師と分担したり、カルテの代行入力などの事務作業を医師事務作業補助者へ移すタスクシフト・タスクシェアが進んでいます。
しかし、就業人口が減少する中で採用も容易ではなく、シフト先となる医療クラークや看護職、事務職も負担に耐えられなくなる可能性があります。タスクシフトと同時に受け手側の業務効率化を進めなければ、負担の付け替えにとどまってしまう点が大きな課題です。
病院経営は、物価高騰や賃上げ対応による費用増を収益の伸びで吸収できない増収減益の傾向が続いています。日本病院会など4団体の調査によると、2024年度は医業利益で赤字となった病院の割合が74.6%、経常利益ベースでも65.0%に達しました。
人手が足りないからといって単純に増員できる環境ではないため、限られた人員で業務量をこなす仕組みづくりが不可欠です。改善のテーマも、コスト削減だけでなく、算定漏れの解消や病床稼働の向上といった収益面と一体で考える必要があります。
レセプト返戻の集計、未収金の入金確認、月次の経営会議資料、役所や学会への届出資料など、病院の事務作業には日次・週次・月次・年次で繰り返される定型業務が数多く存在します。
これらは電子カルテや医事会計システム、文書管理システムなど複数のシステムをまたぐことが多く、担当者がデータを転記・加工して仕上げているケースが目立ちます。手作業が前提となっているため、繁忙期に残業が集中し、入力ミスの温床にもなりやすい領域です。
診療報酬の算定は要件が細かく、現場が慎重になりすぎると本来算定できる加算や指導料を取り切れない状態が生じます。自院の算定状況が他院と比べて高いのか低いのかを把握できていなければ、そもそも漏れに気づくことができません。
また、経理や医事の業務が特定のベテラン職員の経験に依存している場合、退職や異動で業務が止まるリスクを抱えることになります。マニュアルが整備されていない状態は、引継ぎコストの増加にも直結します。
病院で業務改善を実現するためには、診療部門・看護部門・医事課・経理などをまたいだ業務の実態を把握し、改善の優先順位を決めることが重要です。
ここでは、病院で特に効果が期待できる改善方法を見ていきましょう。
最初に取り組みたいのが、業務量の可視化です。職種や部門ごとに「誰が・どの業務に・どれだけ時間を使っているか」を調べることで、直接業務と間接業務の比率や、病床稼働と業務量の関係が明らかになります。
コンサルティング会社では、スマートフォンアプリなどを用いた業務量調査とスタッフヒアリング、KPI分析を組み合わせ、改善余地の大きい業務を特定する手法が用いられています。感覚ではなくデータをもとに議論できるため、現場の納得感を得やすい点もメリットです。
集計や転記、報告といった定型反復の事務作業は、RPAが得意とする領域です。事例3のように、未収金の入金確認やレセプト返戻の報告といった期日前に残業が集中する業務から着手すると、効果を実感しやすくなります。
ただし、闇雲に自動化すればよいわけではありません。院内の業務フローを整理し、電子カルテや医事会計システムのデータ構造を理解したうえで、アウトプットと業務フローを再構築・標準化してからシナリオに落とし込む必要があります。改修の手間を抑えるため、開発と保守を院内で担える体制を整えるかどうかも、事前に検討しておきたいポイントです。
他院との比較データを持つことで、算定漏れや在院日数、病床稼働の課題が具体的に見えてきます。事例1のように、「他院は算定している条件で自院は算定していない」という事実が共有されると、現場の行動が変わりやすくなります。
加算の算定を増やす取り組みは、単なる増収策ではありません。算定要件を満たす運用に整えていく過程で、記録様式の統一やチェック体制の見直しが進み、結果として業務の標準化・効率化にもつながります。
経理や労務といったバックオフィス業務は、外部委託と相性の良い領域です。事例2のように、記帳業務など切り出しやすい定型業務を外注すれば、院内の担当者は確認や判断業務に集中できます。
委託を検討する際は、あわせて業務フローのマニュアル化を進めることが重要です。手順が明文化されていれば、担当者が交代しても品質を維持でき、属人化とブラックボックス化の解消にも直結します。
ICT機器等の導入による業務効率化には、公的な支援策も用意されています。厚生労働省の「医療分野における業務効率化・職場環境改善支援事業」は、令和8年度に実施され、要件を満たす病院に対して1施設あたり上限8,000万円を補助する内容です。申請にあたっては、定量的な効率化目標を含む「業務効率化計画」の策定や、管理者が委員長となる「業務効率化推進委員会」の設置などが求められます。
こうした計画づくりや、業務の可視化から改善施策の立案、実行体制の整備までを院内のリソースだけで進めるのは容易ではありません。業務改善コンサルティング会社を活用すれば、現状業務の可視化、改善施策の優先順位付け、システム導入や外注化の支援、実行と定着のフォローまで一貫して相談できます。
病院の業務改善では、診療報酬の算定状況、事務作業の量、経理・労務の運用体制といった複数の要素を横断して見直すことが重要です。医師の働き方改革でタスクシフトが進むほど、受け手となる部門の業務効率化が欠かせません。
まずは業務量を可視化し、定型作業・二重入力・属人化している業務を洗い出すことが出発点です。そのうえで、RPAによる自動化、データに基づく算定の最適化、バックオフィスの標準化・外部委託といった手段を組み合わせれば、人員を増やさずに改善を進める余地が見えてきます。
さらに、業務改善コンサルティング会社を活用すれば、現場の実態把握から改善施策の実行・定着まで包括的に進めることが可能です。公的な補助事業の活用を検討する際にも、計画策定や目標設定の面で支援を受けられます。
その結果、職員の負担軽減だけでなく、経営指標の改善や業務品質の安定にもつながります。改善によって生まれた時間を患者へのケアや職員の育成に充てることで、地域から選ばれ続ける病院づくりの基盤を構築できるでしょう。
あわせて、業務改善コンサルティング会社をまとめた紹介ページもご用意しておりますので、ぜひご覧ください。
業務改善を進めるにあたっては、自社の課題や体制に合った支援パートナーの選定が重要です。ここでは、部署別の業務課題に対応し、アウトソーシングも含めた柔軟な支援が可能な業務改善コンサル会社をご紹介します。

経理部門のアウトソーシングを35年※1継続し、顧客満足度85.5%※2と質の高いサービスを提供。
ITコーディネータが17名在籍※3。業務のボトルネックを可視化し、独自ツールの開発を含めて課題解決まで伴走支援。

3,000社以上※4の人事プロジェクト経験があり 、採用・労務・組織管理をトータルでサポート。
AI開発企業との協業により、面接支援や応募者スクリーニングなどをAIで自動化。評価のばらつき低減にも貢献。

総務領域で25年※1の実績を誇る。属人化・ブラックボックス化した業務を可視化し、効率化に導く。
総務にとどまらず、組織全体の支援に対応。突発的なタスクにも、常駐・スポット対応など柔軟な体制で支援可能。