医薬品メーカーは、毎年の薬価改定による利益圧迫、GMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)をはじめとする厳しい品質管理体制の維持、さらには研究開発投資の拡大など、多方面からコスト圧力を受けています。こうした環境下で競争力を維持するには、製造・管理・研究開発のあらゆる領域で業務改善を進めることが不可欠です。
しかし、「自前の改善活動は手詰まり」「システムが老朽化しているが刷新の進め方がわからない」「組織の活力が低下している」といった声も少なくありません。本記事では、コンサルティング会社を活用して成果を上げた具体的な事例と、改善を成功させるためのポイントを解説します。
医薬品メーカーが直面するさまざまな課題に対し、コンサルティング会社が支援した業務改善事例を見ていきましょう。
注射剤やホルモン剤を主力とする富士製薬工業では、経験則に基づくコスト管理にとどまり、自前での改善活動が手詰まりの状態に陥っていました。管理指標も「計画達成率」のみで、コスト削減の視点が不足していたほか、直接的な製造作業よりも間接活動時間が想像以上に膨らんでいることも課題でした。
この状況を打破するため、JMACの支援のもと「FSIP(エフシップ)プロジェクト」を立ち上げ、工場内のあらゆるコストの「見える化」に着手。作業分析による人員の最適配置、検査工程の見直し、ロット量の最適化などを段階的に実施しました。改善施策はABC3段階でランク付けし、定期会議で進捗を共有する仕組みも構築しています。
その結果、2年半で工場全体の製造原価を10億円削減することに成功。約30名分の工数削減も実現し、組織全体でコスト意識を共有する体制が整いました。
医薬品原薬・中間体を製造する白鳥製薬では、長年使い続けた基幹システム(AS/400)が老朽化し、多品種少量生産の事業体制に適合しない状態となっていました。多重入力による業務の属人化が進み、実績ベースの入力のみで計画・予測機能が不足していたことも課題でした。
インテックの支援のもと、生産・販売・原価管理にはMCFrame、会計・人事給与にはProActive E2を導入。あわせて、標準原価計算の導入や多重入力が発生していた業務フローの見直しなど、業務プロセス改革(BPR)を並行して推進しました。
キックオフからわずか9ヶ月で新基幹システムの本稼働を実現。月次決算業務は約20日から10営業日程度に短縮され、リアルタイムでの経営情報の把握と、現場のコスト意識向上にもつながっています。
臨床検査機器の開発・製造を手がけるシスメックスでは、研究開発部門に「上から言われたことだけやればいい」という空気が漂い、指示待ちの組織風土が定着していました。特許数や外部機関との共同研究数も減少傾向にあり、中長期的なイノベーション創出への危機感が高まっていました。
JMACの支援により、トップダウンの指示待ち体制から、チームが自ら技術方向性を議論し提案する仕組みへと転換。上長への「エスカレーション基本」の姿勢を「対等な議論」へ変え、チームリーダー層とトップの対話の場も設計しました。
その結果、研究員が自ら技術戦略を提案し、5年後・10年後を見据えた行動をとる自律的なR&D組織への変革を実現。部門横断プロジェクトの推進も活発化し、支援開始から10年以上経った現在も改善の文化が根付いています。
医薬品業界では、ほぼ毎年実施される薬価改定により、製品の売上単価が継続的に引き下げられています。利益を確保するためにはコスト削減が不可欠ですが、現場レベルの経験則に基づく改善だけでは効果が頭打ちになるケースも少なくありません。
どこにコストが発生しているのかが見えないまま、部分的なコストカットを繰り返しても抜本的な解決には至りにくく、全体最適の視点で見直す必要があります。
医薬品の製造ではGMP対応が求められるため、手順書の確認・更新、設備の点検記録、品質検査の記録など、直接の製造作業以外の間接業務が多く発生します。これらの多くが紙ベースやExcelでの運用に依存しており、手作業の負担が大きくなりがちです。
さらに、品質管理や製造の専門知識を持つ特定の担当者に業務が集中すると、属人化が進行し、異動や退職による業務継続リスクが高まります。
医薬品メーカーの中には、数十年にわたって同じ基幹システムを使い続けている企業もあります。経済産業省が指摘した「2025年の崖」問題が示すように、レガシーシステムの老朽化は全社的なデータ連携や業務効率化の足かせとなります。
各部門でシステムがサイロ化し、同じデータの多重入力やCSV加工が常態化している状況では、リアルタイムの経営判断も困難になります。
研究開発部門は、日常的な実験や試験対応に追われ、中長期的な視点での研究活動が後回しになりやすい傾向があります。トップダウンの指示に従うことが優先される組織風土が定着すると、研究者の自主性が低下し、新たな価値創出に向けた挑戦が停滞します。
新薬開発競争が激化する中、R&D組織の活性化は医薬品メーカーにとって重要な経営課題です。
前述の課題を踏まえ、医薬品メーカーで効果的に業務改善を進めるためのポイントを見ていきましょう。
業務改善の第一歩は、現場の実態を正確に把握することです。各工程の作業時間、間接活動の比率、製品ごとの原価構成などを数値化し、どこにムダが発生しているかを可視化します。
「見える化」によってコスト構造が明らかになれば、削減効果が大きい領域から優先的に取り組むことができ、改善施策の費用対効果も判断しやすくなります。
属人化した手作業や紙ベースの記録を解消するには、ERP(統合基幹業務システム)の導入による全社的なデータ一元管理が有効です。あわせて、RPAやAI-OCRを活用すれば、定型的な事務処理を自動化し、担当者の負担を大幅に軽減できます。
システム刷新にあたっては、業務フローの見直し(BPR)を同時に進めることで、既存の非効率を新システムに引き継がない設計が可能になります。
システムや手法を導入しても、それを活用する「人」の意識が変わらなければ定着しません。現場が自律的に改善を回し続ける仕組みづくりが不可欠です。
例えば、チーム単位での改善テーマの設定と進捗共有、成果の可視化と表彰、対等な議論ができる場の設計など、現場発の改善が自然に生まれる文化を醸成することで、持続的な効果が期待できます。
社内メンバーだけで改善を進めようとすると、「これまでのやり方が当たり前」という固定観念に縛られやすくなります。第三者であるコンサルタントの客観的な分析とノウハウを取り入れることで、自社だけでは気づけなかった課題や改善余地が明らかになります。
本記事で紹介した事例が示すように、コンサルティング会社の支援を受けることで、コスト構造の抜本的な見直し、システム刷新の短期実現、組織風土の変革など、大きな成果につながる可能性があります。
医薬品メーカーの業務改善では、薬価改定による利益圧迫への対応、製造現場の間接業務・属人化の解消、老朽化システムの刷新、R&D組織の活性化といった、業界特有の課題への対処が求められます。
本記事で紹介した事例では、コストの見える化により工場全体で10億円の原価削減に成功した例、わずか9ヶ月で基幹システム刷新とBPRを実現した例、R&D組織の意識改革によって自律的な研究開発体制を構築した例など、コンサルティング会社の支援によって大きな成果が生まれています。
業務改善によって生み出された時間やコストは、新薬の研究開発、品質管理体制の強化、人材育成など、医薬品メーカーが本来注力すべき領域に再投資できます。自社の課題に向き合い、持続的な成長基盤を築くためにも、専門のコンサルティング会社への相談を検討してみてはいかがでしょうか。
あわせて、業務改善コンサルティング会社をまとめた紹介ページもご用意しておりますので、ぜひご覧ください。
業務改善を進めるにあたっては、自社の課題や体制に合った支援パートナーの選定が重要です。ここでは、部署別の業務課題に対応し、アウトソーシングも含めた柔軟な支援が可能な業務改善コンサル会社をご紹介します。

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